ZF39 (Zielvier)        Page 2



■Zielvierについて


 その操作方法は、同時期の一般的なドイツ製民間用照準鏡とほぼ同じである。

 レチクルの上下調整(距離)は、本体鏡筒の中央付近上面にあるエレベーションディスクを回転させることによって行う。製造後に軍用に転換された民間用照準鏡や、戦時中に軍との契約によって製造された物は、このディスクに1から8まで目盛が刻まれている。これは100mから800mに対応するが、極初期型、特にReichsheer時代のものには100から1,000(100mから1,000m)まで目盛が刻まれていたとされる。マニュアルD134中のエレベーションリングについて、説明文中では前者(1〜8)であるのにも関わらず、図では後者(100〜1,000)であるのは、恐らくReichsheer時代の図をそのまま転用したためではないかと想像される。
 一方、純粋に民間用に製造・使用されたもののディスクには目盛が全く刻まれていないことが基本であり、射手の好みとする距離等、必要に応じて目盛が刻まれた。例えば、1939年の米国向けZeiss製照準鏡の広告文中には、銃器メーカーにより試射の結果に対応する距離目盛を刻むことができる旨が書かれている(*1)。射撃距離等、状況を選べる民間人とそうでない軍用途との違いであろう。

 エレベーションを目標の距離に合わせて調整した後は、それを固定するために、エレベーションディスクの手前側についている固定ネジを締める。また、ウィンデージ(左右調整)は照準鏡本体にその機構はなく、マウント側で行う(LTMの場合は後部マウントをネジにより左右にずらす)。

 さらに、Zielvier独特の機構としては、エレベーションリングの上に焦点調整のためのレバーが付いている。これはエレベーションディスクの回転とは独立しており、左右に回して焦点を合わせるようになっている。また、極初期型のものにはこのレバーの下に+0〜2と-1〜3と刻まれた円盤が付属していた。

 照準鏡上のマーキングとしては、一般的には本体鏡筒上面対眼レンズ側にメーカーロゴ"CARL ZEISS/JENA"と製品名"Zielvier"そしてシリアルNoが刻まれている。この"Zielvier"の書体は、初期型と後期型の2種類存在する。
 また、軍用として製造されたものには、使用しているグリースの種類を表す"△"や"+"マークが付属しているものや、更にはメーカーロゴの替わりにCarl Zeissを示すメーカーコード"blc"が刻まれているものなどが存在し、極少数現存している(*2)。
 その他、本体鏡筒左側面に部隊名が刻まれたものが極初期型に見られるが、これは1941年の独ソ戦の開始と同時期に軍の展開状況を秘匿するために打刻が禁止されたとのことである(*3)。

 初期に民間用として生産されたものから戦時中の軍契約に基づく生産品まで、エレベーションディスク基部の微妙な違い以外、外形の違いはほとんどないが、戦時中の生産品の中には光や雨を防ぐために対物側鏡筒先端を延長したシェード付きのものも存在する。


 ■図:Zielvier(民間型)




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(*1) 文献H、p.290
(*2) 文献F、p.442に写真が掲載されている。
(*3) 上記、p.219
■参考文献リスト