■その概説と評価 ここでは、ZF40、ZF41、ZF41/1等の一連の望遠照準鏡を「ZF41系照準鏡」として取り上げる。 ZF41系の特徴は、(1)1.5倍の低倍率で小型であること、(2)照準鏡の対眼レンズ側後端から射手の目までの距離(eye relief:接眼距離)が一般的なものと比べてかなり長いこと、である(*1)。 ZF41系は、実質的な意味でWehrmacht初の制式望遠照準鏡と言って良く、一つの設計に基づいて複数の光学機器メーカーにより生産が行われている。生産を行ったメーカーは 合計15社程度である(*2)。その内、どのメーカーで開発が行われたのかは明らかではないが、生産数やバリエーションからcxn(Emil Busch)と深い関わりがあるのは明白である。 Karabiner98kとの組合せ(Karabiner98k-Zf41)を主として話を進めると、その開発・採用の経緯は 1938年頃から新型望遠照準鏡開発の動きが始まり、1939年の第二次世界大戦開戦前にはその形が ほぼできあがっていたようである(*3)。 そして、ポーランド戦後の前線指揮官からの要望として、より精密射撃ができる望遠照準鏡付の小銃が挙がったこと(*4)が制式採用の直接の契機となったようである。 これに関しては、当初、軍兵器局は4倍率の望遠照準鏡を検討していたが、党と深い関わりのある人物の関与により低倍率のもの(すなわちZF41系)が採用されたという(*5)。 当初に述べたZF41系の二つの特徴は、いずれも本格的な狙撃という特殊任務に用いるには不適であることから、狙撃銃としては失敗作であるとして、Karabiner98k-Zf41、 ひいてはZF41系の評価は否定的になることが多い。ここではもう一度、その本来の設計上の意図と前線が求めたもの、そして実際にどう使われたのかということについて考えて みたい。 まず、ZF41系照準鏡の設計意図は本格的な狙撃銃用としてであったのか、それとも一般の歩兵分隊に装備する、通常よりも正確な射撃ができる小銃用としてであったのか。 それは明らかに後者であり、その観点からするとZF41系は決して失敗作ではない。 小型なZF41系は、大型の4倍望遠照準鏡に比べて取り扱いやすく、生産性、コスト的にも量産に向いている。より高倍率であればそれに超したことはないかもしれないが、 実際にはそれだけ誤差も大きくなるので調整や取扱は難しくなる。 接眼距離が長いことも、照準時に周辺状況が良く見え、また照準鏡の視野内から目標が外れた場合にもすぐに再捕捉できることから、通常の戦闘時には有利であったと 思われる。 この辺りの思想は、現代の軍用小銃でも同じ1.5倍の光学照準器を標準装備するSteyr AUGがあることからも決して誤りではなく、また、他に光学照準器を標準装備するものには L85A1やG36等もあり(こちらはそれぞれ、4倍、3倍であるが)、ある意味、先進的な試みだったのではないかと考えることもできる。 |
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(*1) | K98kとの組合せの場合、実測したところLTMでは12cm程度であるのに対して35cm程度であった。 |
(*2) | 文献F p.189 にリスト(15社)があり、文献Cではその内、13社が確実としているが、それにbmjとemvを加えて15社とみる。 →(参考)メーカーコード一覧 |
(*3) | 文献F p.185 |
(*4) | 文献C p.69 |
(*5) | 文献A p.165、文献F p.185 |
■参考文献リスト |