K98k用民間型望遠照準鏡     Page3



■軍契約型望遠照準鏡


 戦争の中期以降、民間用の望遠照準鏡をベースにしていながら軍による影響下で生産されたと思われるものが存在する。これを「軍契約型望遠照準鏡」と呼ぶことにする。

 これらがいつ頃から製造されるようになったかは明確でないが、現存するオリジナルの狙撃用Karabiner 98kの製造年から類推すると、早いもので1943年、主としては1944年以降と思われる。その経緯がどのようなものなのか、例えば正式な契約に基づくものであったのか、それとも戦時協力の一環であったのか、メーカーによっても異なるかもしれず、詳細は不明である。いずれにしても背景としては、最初に述べたとおり、制式照準鏡の性能不振により、軍がより積極的に照準鏡の供給にまで関わろうとした結果と考えられる。

 このような軍契約型望遠照準鏡の種類(メーカー)は、全体的な民間用照準鏡の多様さに比べて決して多くない。それらには共通する特徴があるので、それは軍の求めた共通仕様の結果であったのかもしれない。その一方、どの特徴についても種類によって例外が見られるのが興味深いところである。以下、それらの特徴について順に述べる。

@メーカーコードの使用
 各メーカーに割り当てられた英小文字3文字のメーカーコードが主鏡筒上等に刻印され、その場合、民間用で刻印されていたメーカー名やメーカーロゴは表示されなくなっている。

Aグリス記号の刻印
 ドイツの軍用光学機器には内部機構に使用されているグリスの種類を示す記号が機器に刻印されている。
 軍契約型照準鏡の場合、一般的には「+」が、一部のものには「△」が刻印されている。「+」付きのものにはグリス"Instrumentenfett 1442"が使用されており、-40℃までの環境下での使用に耐えうるとされた(*1)。また、記号「△」が明示するグリスは、その後に登場したもので、何らかの改良が加えられたものと思われる。
 いずれの刻印も水色に着色されていたとされ、実際に青色塗料が残っているものが確認できる。色については、水色が寒冷地仕様であるのに対して白が一般仕様、緑が熱帯仕様であるとする説がある(*2)が、その根拠は今のところ確認できていない。

B固定焦点
 先に述べたとおり、戦前からの民間用照準鏡には焦点調節装置があったが、それを廃して固定焦点としている。これには省コスト・製造時間と共に、マウントとの干渉という問題もあったためと推測される。具体的には、後に説明するタレット式マウントの場合は、マウントのリアリングと照準鏡の焦点調節リングとの位置が重なることが多く、利用しづらいとのことである。
 これに対して、リング式ではなくエレベーションディスク上のレバーで焦点調整するZeissのZielvierとZielsechsは変更されることなく生産が継続されている。

C対物レンズ前面鏡筒の延長
 日除け・雨除けのために、鏡筒が対物レンズ前面に同径で延長されており、 ZF41やGwZF4のレインシールド(regenschutzrohr)はハメ込み式で取り外し可能であるのに対して、こちらはネジ込み式で本体と一体になっている。
 この延長部は、下側に水抜き用の穴が開いているタイプや、レンズの反射抑制のためにさらに前面にアタッチメントを付けるタイプなどのバリエーションがある。

Dエレベーションディスク上の距離目盛
 「ZF39」の「Zielvierについて」でも述べたとおり、一般的な民間用照準鏡ではエレベーションディスクに距離調整用の目盛りがあまり刻まれていないが、軍用のものには基本的に100mから800mに対応する1から8までが刻まれている。ただ、これは軍用としては必須と言えるようで、民間転用型でも刻まれることになっていたようである(*3)ので、軍契約型のみの特徴とは言えないであろう。



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(*1) 文献vi p.217
(*2) 文献F p.328、文献G p.301
(*3) 文献v p.7
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■メーカーコード一覧