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■民間転用型望遠照準鏡 狩猟用の望遠照準鏡は、第二次世界大戦勃発後も製造・販売が継続され、海外へも多数が輸出されたが、1941年以降は一般市民への販売や海外への輸出が禁止されたと言われる(*1)。 これらの民間用に製造された照準鏡の内、軍が購入あるいは徴用して利用したものを総称して「民間転用型望遠照準鏡」と呼ぶことにする。 実際の適用方法を見ると、マウントごとKarabiner 98kに移植した場合と、照準鏡本体のみ軍用マウントに装着した場合の両方がある。単純な見方として、既存のものを流用した場合は前者、バラで存在したものや新規に製造されたものを適用した場合は後者、ということであろう。 実際に利用された民間転用型照準鏡の種類はかなりの数に上ると思われるが、明示されたものとして、1943年2月23日付けのマニュアルD136/2に図と名称が記載された6タイプを紹介する(*2)。ただし、図は小さく不明瞭で説明もなく、詳細は不明なことが多い（調査中！）。 これらは、照準鏡のみを軍用マウントに適用した例である。 １）Heliavier オーストリアのKarl Kahles Optische Anstalt製4倍率。本体に"Heliavier"と刻印されたものと"H/4x60"と刻印されたものがあるが、その刻印以外は全く同型と思われる。同時代の一般的なドイツ製照準鏡は主鏡筒の接眼側にリング型の焦点調節装置をもつが、この製品は完全なリング型ではなく"Half Ring Focus"と呼ばれる半リング状のものをもつのが特徴である。 ２）Zielvier Carl Zeiss製の4倍率。「ZF39」で既に述べたようにReichsheerに採用されていたこともあるので、他種とは多少毛色が異なるが、民間ベースのものを購入という点では基本的に同じと言えよう。1920年代末の開発から終戦まで、基本的なデザインは変わっていない。また、戦後は生産されていないと言われている。 ■図：Zielvier（民間型） ３）Ziel-Dialyt 6fach 後に"bmj"のメーカーコードをもつことになる、Wetzlarに位置するM. Hensoldt & Sohne Optische Werk製の6倍率。このメーカーは現在、Hensoldt AGとしてZeissグループの傘下に入っている。 このシリーズには4倍率も存在し、後の"DIALYTAN"シリーズよりも一世代前のタイプとして位置づけられる。両者の大きな違いは、Ziel-Dialytについてはレンズの明るさを示すluminosity値が43で主鏡筒径が22mmであるのに対して、DIALYTANのluminosity値は81、径は26mmであることだが、両シリーズとも同名でもデザイン上の細かなバリエーションが存在し、詳細は不明。 ４）Zieljagd 4fach 戦前製のものは上記Hensoldt製と言われるが、その詳細は未確認。Ziel-Dialytシリーズとどのように区別化されるのかも不明である。 また、同じくWetzlarに位置する1946年設立のKaps Optikが現在でも同名のスコープを製造している（もちろん、デザインは全く異なる）。両者の関係も現段階ではまだ未確認。 ５）AJAK 4fach 上記の名称で記載されているが、これは明らかに"AJACK"のタイプミスである。 AJACKは、Berlinに位置した光学機器メーカーA.Jackenkroll Optische Anstalt(*3)製照準鏡の製品名で、このメーカーは第一次世界大戦前より多数の照準鏡を製造し、2.5倍率から10倍率のものまで、"Ajack Scopes"の名称で海外へ多数輸出している。現在では既に存在しないが、戦後もAJACK 4x90の製造を継続したと言われる。 4倍率のものは、4x42、4x68、4x90の3種存在したが、ここでは当時最新式の4x90を指すと思われる(*4)。ちなみに、4x90の初期生産品までは"Ajack"と刻印されたが、以降は"AJACK"と大文字になっている。 ６）Zielsechs Carl Zeiss製の6倍率。Zielvierと同じく、次に説明する「軍契約型」としても基本的に同じデザインのまま、終戦まで生産された。 |
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| (*1) | 文献F p.179 等 |
| (*2) | 文献v。同図は文献iv p.42、文献F p.225にも掲載されている。 |
| (*3) | 多くの文献資料では"Jackenroll"とされるが、戦前のカタログや本体のメーカーロゴ刻印によると"Jackenkroll"が正しい。 |
| (*4) | 42、68、90等の数字は、独語でlichtstaerke、英語でluminosityと言い、レンズの明るさを表す。その値は、ひとみ径の２乗として求められる。 |
| ■参考文献リスト | |
| ■メーカーコード一覧 | |