K98k用民間型望遠照準鏡     Page4



■軍契約型望遠照準鏡(続き)


 先に述べたとおり、軍契約型望遠照準鏡として見られる種類(メーカー)は決して多くなく、私が確認した限りでは以下の7つを挙げることができる。
 @AJACK 4x90
 ADIALYTAN 4x (bmj)
 BDIALYTAN 4x (bek)
 CDIALYTAN 4x (dkl)
 DKahles 4x (cad)
 EOptikotechna 4x (dow)
 FZielvier, Zielsechs (blc)
 これらの内、当時の写真でよく確認できるものは、AJACK 4x90、DIALYTAN 4x(bmj)、Zielvierの三つである。

1)AJACK 4x90
 AJACK 4x90については民間転用型として既に少し説明したが、一般的な軍契約型に先立って軍用のために製造されたものが存在する。それが親衛隊(SS)との契約によって製造されたものである。この経緯の詳細は不明であるが、早くから戦術的に狙撃兵の重要性を認識していた親衛隊が、銃器供給が不十分であった初期の武装親衛隊用に望遠照準鏡をも独自に入手を図った結果と思われる。照準鏡の外観としては、基本的に民間用と同様に焦点調整リングが付属したタイプであるが、刻印のみが異なる。エレベーションタワーの左側面にドクロのマークと"SS-Dienstglas"(SS制式光学機器)、右側面には"AJACK"とシリアルナンバーが刻まれている。また、エレベーションディスク上の刻印は、一般的には民間用と同じであるが、軍用と同様に1-8の数字が刻まれている例もある。

 ■図:AJACK 4x90 SS-Dienstglas

 一般的な軍契約型については、先に述べた共通する特徴をもつ。ただし、メーカーコードについては、A.Jackenkrollにkxvというコードが指定されていたにも関わらず、戦争末期の製品まで含めてAJACK照準鏡にメーカーコードを使用した例は確認されていない。照準鏡上の刻印は、エレベーションタワーにあるのみで、片側に"AJACK 4x90"、反対側にシリアルナンバーとグリース記号"+"が刻印されている。
 また、軍契約型AJACKの初期のものでは日除け用対物レンズ側鏡筒の延長部が見られないが、中期以降では必ず付属している。

 ■図:AJACK 4x90


2)DIALYTAN 4x (bmj)
 bmjのコードをもつHensoldt & Sohne Optische Werkの手による"DIALYTAN"シリーズは、おそらく1930年代に開発され、AJACK 4x90と同じく戦前から民間用として多く製造された。このため、民間転用型として軍用にも多く用いられたと思われる(*1)。
 また、戦後も製造が行われ、戦前、戦後に共通する特徴は焦点調整リングが付属していることである。"DIALYTAN"が刻印されたこれらの照準鏡には、 Ziel-Dialytに類似するシルエットをもつものから、エレベーションタワー形状の違い等まで多様なものがある。前者は当然戦前製と判断できるが、後者など細かなバリエーションについては、私自身としても戦前、戦後等モデルの整理がついていない。
 一方、軍契約型としては、ほぼすべての共通項をみたすので明白に区別化することができる。刻印は、主鏡筒左側面に"DIALYTAN 4x"とシリアルナンバー、その下に"bmj"と"+"が刻まれている。


3)DIALYTAN 4x (bek)
 bekのコードは、bmjと同じHensoldtであるが、Herbornに位置したHensoldt Werk fuer Optik und Mechanikである。両者の関係は、ある研究者(*2)によるとHensoldt Herbornの所有者Hans Hensoldtは、Hensoldt Wetlarの創設者Moritz Carl Hensoldtの孫息子であり、Hans自身もHensoldt Wetzlarの役員であったとのことである。
 bek製DIALYTAN 4xはbmjと同じ名称であり、bmj製とシリアルナンバーが連番ではないかとの説もある(*3)。ただし、両者の形状はまったく異なり、特にエレベーションタワーがその他の照準鏡と比べても特徴的である。
 この照準鏡は軍契約型として1944年に登場したといわれ、それ以前のものは民間型も含めて確認できていない。また、戦後の製造についても不明である。

 ■図:bek製 DIALYTAN



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(*1) 文献C に例あり。ただし、これらの一部は戦後製で、後の作り上げであるとする意見もある。
(*2) 海外の銃器系ネットにおいて、戦前〜戦後のヨーロッパ製照準鏡の権威として知られるgreggdw氏。
(*3) 上記、greggdw氏による。
■参考文献リスト
■メーカーコード一覧